2020年10月25日
硫化カドミウム
硫化カドミウムの結晶構造には高温安定のα型(wurtzite, hexagonal)と低温安定のβ型(zinc blende, cubic)が存在する。XRDパターンを比較すると,低温ではβ型由来の26°付近にみられるブロードなピークが特徴的であり,高温で焼成するにつれて,そのピークが鋭く3本に分裂し,α型のピークとなる。しかし,焼成過程に酸素が存在すると,200〜300℃以上で強く酸化が進み,酸化カドミウムが生成する。したがってα型CdSを焼成によって得る場合には,不活性ガス雰囲気での処理が必要である。水素生成能は一般にα型がより高いとされている。硫化カドミウムは,水分解に適したバンド構造をもち,可視光(~600 nm程度)を吸収することから,1970年代から水分解への応用が期待されていたが,自身を酸化してしまう光腐食によって,単体での水分解は達成されていない。