2020年10月24日
酸化チタン
酸化チタン(titanium dioxide, TiO2)はもっとも広く普及,研究されている光触媒である。結晶構造には,天然結晶であるアナタース,ルチル,ブルッカイトと人工的に作られたTiO2(B),TiO2(H)が存在する。特に光触媒として用いられることが多いのはアナタースとルチルであり,ルチルが最安定構造である。バンドギャップは3.0~3.2 eVであることが多く,吸収端に変換すると,およそ390 nm~410 nmまでの吸収を持つことになる。酸化チタンの伝導帯は水素イオンの還元,酸素の1電子還元が共に起こりうる準位であることが多く,水素生成や活性酸素の生成を伴う有機物分解などに用いられる。しかし,太陽光下で用いる場合,太陽光のスペクトルは可視光領域にピークを持つため,酸化チタンでは有効利用することが難しい。ドープ型の酸化チタンなどが可視光応答性を持つ光触媒として報告されているが,再結合中心になりうる,十分に吸収波長が拡大されていないなどの課題が存在する。